2014年3月30日、日曜日。
2012年からいつかは、と思い続けていた、「カラフルの仲間による、音楽ボランティア」が、「パレット」という組織(あくまでもサークルですが)として、スタートしました。
音楽をお届けにうかがったのは、Riraiza、坂口豊さん、ゆらぎ、の3ユニット。そして、事務局として笹田さん。
お届けさせていただいたのは、私がかつて2年間ほど一緒に過ごしたことのある、美沙希ちゃん。
美沙希ちゃんが、高等部1年、2年のとき受け持ちました。
私が転勤になったわけでもないのに、いろいろな事情から、クラスを離れざるを得ず、本当に辛く、悔しい思いをしました。
けれど、この日、そんなことも、全て忘れました。
この写真は、最後に美沙希ちゃんを囲んでの記念写真です。
今回、おうちにうかがっての演奏とのことで、それぞれに準備をしてきました。
1番目は、Riraiza。
私が、美沙希ちゃんに書いていった詩を、相方の城島さんのギターの音色にのせて、朗読するところから始めました。
「春に」
美沙希ちゃん
今日のこの日、この瞬間を、
私はずっと夢見てきました。
あなたと一緒に過ごした、
高校1年、2年のとき。
クラスのみんなで、毎日笑って、大騒ぎして。
まさしく「青春」、といえた、あの日々。
その時の写真は、たくさんあって、
今も、私を力づけてくれます。
なのに、高校3年の写真は、一枚もなく、
その現実は、時に私を、とても悲しませました。
けれど、いま、
私は、私の大切な仲間と一緒に、
あなたの前に、こうしています。
あなたの家の、あなたのベッドの前で、
楽器や楽譜を手に。
音楽は、音符をつないで、
美沙希ちゃんと、私たちを
出会わせてくれました。
音符の羽をもった天使たちが、
私たちには見えない手で、
美沙希ちゃんと、私たちの手を、
重ね合わせてくれたんだ。
わたしは、そう思います。
いま、とても、心があったかいよ。
ありがとう。
そして、これから、よろしくね。
たくさんの思いをこめて、この詩を書いていき、読みました。
前日練習では、バイオリンよりも、ギター伴奏と詩の朗読の練習に、かなりの時間を割きました。
この詩に続き、明るいアレンジで「タイタニックのテーマ曲」を。
そして、谷川俊太郎の「はる」の朗読に続き、松任谷由美のアニバーサリー。
美沙希ちゃんに見守られながら、私は今までで、一番、気持ちがバイオリンにのった、と感じました。
そして、2番目は、シンガーソングライター、坂口豊さん。
直前になって、「自信がないです・・・」とおっしゃっていた坂口さんでしたが、美沙希ちゃんの、純真で無垢な、きらきらの瞳の前に、今までで最高の演奏でした!
曲は「稜線」と「Dahan-Dahan」でした。
どちらも、どんな歌なのかを、優しい声で説明し、歌いました。
「稜線」のとき、私が驚いた出来事がありました。
「稜線」の途中で坂口さんはギターをいったんブレイクさせ、しばらくして、再び弾き出したのですが、ギターの音が止まった瞬間、美沙希ちゃんは、大きく目を見開き、「いったいどうしたの?」と言うように、坂口さんの顔をじっと見上げたのです。それまでの、楽しげな表情が消え、「どうかしたの?」と心配するような表情に変わったのです。そして、また再びギターが始まると・・・、安心したかのように、元の表情に戻ったのです。
「ああ、本当に一生懸命聴いていてくれるんだな」、ということを、実感した瞬間でもあったし、美沙希ちゃんが、単に音楽だけではなく、「いま向き合っている人そのもの」と向かい合っているのだ、と知った瞬間でもありました。
坂口さんの、優しい声、きれいな日本語は、部屋の隅々にまで響き、私たちがリズムをいれる音も、柔らかな音の波となって、部屋の中に満ちていきました。
事務局の笹田さん、終始「すぐ涙ぐんで」しまわれました。
そして、最後はゆらぎ。
この日のために新調されたキーボードを、順子さんが手早くセッティングして、演奏スタート。
一番最初の曲は、ユーミンの「卒業写真」。
「ギャルの美沙希ちゃんは知らないかもしれないけど・・・」と言いながら、始まった演奏と歌は、とても優しく、素敵でした。
美沙希ちゃんの目が楽しそうに笑っていました。
けれど、ボーカルのカルベさん、私が見る限り、今までで一番緊張していました(^^)
緊張で声が震えるカルベさんを、初めて見ました。
だけど、2曲目ではすっかり落ち着き、ピノキオの「星に願いを」。
この曲では、語りも織り交ぜての歌でした。
大好きなディズニーの曲に、美沙希ちゃんもノリノリでした♪
そして、最後は「ミッキーマウスマーチ」
前日、facebookで、順子さんがこのようなコメントを入れました。
「皆さんにゆらぎからお願いがあります(o^^o)
ミッキーマウスマーチをするのですが、その時是非みんなで合奏したいのでご一緒して下さい♪
手持ちの楽器や手拍子足拍子何でもOKです!」
これを見た後、みんな徹底的に手持ちの楽器や、イルミネーションをあさりまくり、当日、ミサキちゃんのベッドも「ミッキーマウスマーチ仕様」に!
最後はみんなで「ミッキーマウスマーチ」大合唱。
とても楽しい締めくくりでした♪
ボランティアに伺った・・・はずの私たちですが、たくさん、たくさん、あたたかな気持ちをいただいて、満たされた思いになって、美沙希ちゃんの家を後にしました。
このあと、みんな、それぞれに思うところを、いろんな形で発信したり、仲間に語ったりしました。
順子さんのブログの一節です。
「二十歳になったミサキちゃんは賑やかなところと音楽が大好きだそうです♪
私達の音楽に合わせて一緒に歌う柔らかい小さな声、音のONとOFFに合わせてクルクル動く濁りのない真っ黒な瞳。細く白い可愛い指は楽しそうに音楽と一緒に歌っていました♪
私達に出来ること。
「音楽って楽しいね♪」って一緒に楽しむことぐらい。
でもそれ以上にミサキちゃんの笑顔に元気をもらったのは私達の方です^ ^」
翌日、坂口さんから入ったメッセージの一部です。
「今日、「お母さん、ぼくが生まれてごめんなさい」という本を読み出しました。
脳性マヒの子の話ですが、障害児をもつ親の大変さったらとてつもないものがあるようです。
もっと早く読んでおくべきでした。
もっとご両親のお気持ちを考えるべきであったのかもしれないし、美沙希ちゃんと触れあいたかった。
大変なご苦労の中でまさに愛を育んでおられる、あの空間にひとときでも身をおくことができたことに、ただただ感謝です。」
そして、美沙希ちゃんのお母さんからのメールの一節です。
「障がい児を育てる大変さはもちろんありますが、それ以上に美沙希からもらったたくさんの喜びや幸せの方が大きくて、私は美沙希に私を母親に選んでくれてありがとうって気持ちでいっぱいです。
・・・パレットの皆様と出会え、素敵な音楽にふれあう事が出来て、本当に幸せに思います。
美沙希のおかげで、こんな素敵な出会いをたくさんさせてもらい、美沙希にも感謝、感謝です」
私たちは、とてつもなく大きなものを与えられた、という思いでいっぱいです。
このような思いを、音楽を通して味わうことができ、これほど「ミュージシャン冥利に尽きる」ことはありません。
本当にありがとうございました。
パレットとして、初めての活動は、このようにして終わりました。
それぞれ、これからの活動の課題や、工夫を、すでにいろいろと考え出しています。
一歩一歩、私たちの音楽を聴いてくださる方から学びながら、より高く、より深い音楽表現を探っていきたいです。
美沙希ちゃんと、ご家族に、心からの感謝の意を表し、この記事を閉じたいと思います。
また、会いましょう!
(注)お名前、写真の掲載は、親御さんの承諾をうけ、ご家族の意思に基づいて掲載しています。
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